都会で働く家庭医のつぶやき

大阪の診療所や中小病院で働く総合診療医です。少しでも多くの人に家庭医の仕事内容や考え方を知ってもらうために広報しています。大学の外にいるからこそできる研究があるをモットーに、気になったことを書いていきます。

技術受容モデル(UTAUT)について

「総合診療医のICT利用を阻む要因はなにか?」というリサーチクエッションをもとに研究をしようと躍起になって文献検索をしている日々が続いてます。

そもそもなんでこんなリサーチクエッションを立てたかというと、働いている診療所の電子カルテが使えなさすぎて…、フリーズする、引用したカルテ内容がズレて保存される、検索機能が貧弱、薬剤情報のアップデートがされないと、悲惨な状況なのに誰も改善しようとしないという現実がもとになってます。

さっとpubmedを検索すると病院での電子カルテ(EMR:electronic health record)・救急医療情報システム(EDIS:emergency department information system)利用についての日本の研究がありました。
Inokuchi, R., Sato, H., Nakamura, K., Aoki, Y., Shinohara, K., Gunshin, M., … Nakajima, S. (2014). Motivations and barriers to implementing electronic health records and ED information systems in Japan. The American Journal of Emergency Medicine, 32(7), 725–730. https://doi.org/10.1016/j.ajem.2014.03.035
簡単にまとめるとコストがかかるし、業務の段取りが悪くなるから 普及しないよ〜という内容です。当たり前ですね。

ただ、診療所での電子カルテ導入を考えるとコストのハードルもありますが、低コストを売りにしても普及していない電子カルテがいっぱいあります。特にクラウド系の電子カルテは低コストなのに…。コストよりも使い手の意識の問題じゃないかな〜と考えて、更に調べていくと「技術の受容と利用の統一理論(UTAUT:Unified theory of acceptance and use of technology)」という評価尺度があるみたいです。新たな情報技術を利用する利用者の行動意図の変化の70%を、UTAUTを使うことで説明できるようです。
Venkatesh, Morris, Davis, & Davis. (2003). User Acceptance of Information Technology: Toward a Unified View. MIS Quarterly, 27(3), 425. https://doi.org/10.2307/30036540
日本語訳がなかったので自分なりに翻訳してみました。海外で作られたものなので日本語にすると変だなと思うところも多々あります。この質問項目を使って質問紙でも作って横断調査でもやってみようかな〜と思ってます。

The UTAUT Questionnaire Items

Performance Expectancy(成果期待)

P1. I would find the system useful in my job (PU).
 自分の仕事に役立つシステムを見つけられると思う
P2. Using the system enables me to accomplish tasks more quickly (RA).
 システムを使用すると、より迅速に仕事を達成できます
P3. Using the system increases my productivity (RA).
 システムを使用すると生産性が向上します
P4. If I use the system, I will increase my chances of getting a raise (OE).
 システムを使用することで、昇進の機会が増えると思う

Effort Expectancy(努力期待)

E1. My interaction with the system would be clear and understandable (PEU).
 システムの操作は明確でわかりやすいと思う
E2. It would be easy for me to become skillful at using the system (PEU).
 システムを使いこなすのは簡単だと思う
E3. I would find the system easy to use (PEU).
 使いやすいシステムだと思う
E4. Learning to operate the system is easy for me (EU).
 システムの操作を学ぶのは簡単です

Social Influence(社会的影響)

S1. People who influence my behavior think that I should use the system (SN).
 私の行動に影響を与える人々は、システムを使うべきだと思っている
SF2: The senior management of this business has been helpful in the use of the system.
 会社の上司は、システムの使用に役立っています。
SF4:In general, the organization has supported the use of system.
 一般的に、組織はシステムの使用をサポートしています。

Facilitating Conditions (促進条件)

PBC2: I have the resources necessary to use the system.
 システムを使用するために必要なリソースがあります。
PBC3: I have the knowledge necessary to use the system.
 システムを使うために必要な知識があります。
PBC5: The system is not compatible with other systems I use.
 自分が使用している他のシステムで代替できるものはない。
FC3: A specific person (or group) is available for assistance with system difficulties.
 特定の人(またはグループ)がシステム障害の支援に使える。