都会で働く家庭医のつぶやき

大阪の診療所や中小病院で働く総合診療医です。少しでも多くの人に家庭医の仕事内容や考え方を知ってもらうために広報しています。大学の外にいるからこそできる研究があるをモットーに、気になったことを書いていきます。

APTTとは?

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APTTとは? 

 

正式名称:


活性化部分トロンボプラスチン時間

(activated partial thromboplastin time:APTT


リンク:血液凝固検査入門:インデックスページ   ←  クリック(全記事、分かり易く図解


  


正常値:


用いる試薬、機器により異なります(通常正常値は、30~40秒位です)



意義:


APTTは、内因系凝固活性化機序を反映する検査です。


すなわち、凝固XII、XI、IX、VIII、X、V、II(プロトロンビンと同義)、I(フィブリノゲンと同義)因子の活性低下で、APTTは延長します。



APTT試薬の中身は、エラジン酸などの活性化物質(いわゆる異物成分)です。血液が凝固する方法は2種類あります。その2種類というのは、組織因子または、異物(陰性荷電)による凝固です。APTTは、この2種類のうち異物による凝固を反映した検査です。



PT(組織因子による凝固)、APTT(異物による凝固)は、血液が凝固する2つの機序を反映しているという意味でも、血液凝固の最も本質的検査ということができます。



APTTが延長する病態:


1)ループスアンチコアグラント(LA):ただし、LA感度が良いAPTT試薬でも、全LAをスクリーニングできません。ですから、LAが疑われる症例では、APTT延長がなくても、カオリン凝固時間(混合試験)や希釈ラッセル蛇毒時間のようなLA検査を行う必要があります。

2)血友病Aまたは第VIII因子インヒビター

3)血友病Bまたは第IX因子インヒビター

4)von Willebrand病(vWD):vWDではvon Willebrand因子(vWF)活性が先天性に低下しています。vWFは第VIII因子のキャリアー蛋白でもあるため、vWDでは第VIII因子活性も低下します。

5)先天性第XII、XI因欠損症。または、これらの凝固因子に対するインヒビター。


6)凝固第X、V因子、プロトロンビン、フィブリノゲンの欠損症または、これらの凝固因子に対するインヒビター(この場合は、PTも延長)。

7)ヘパリン投与時。

8)ワーファリン(ビタミンK拮抗薬)内服中またはビタミンK欠乏症:PT記事を参照。

9) 肝不全:PT記事を参照。



APTTが短縮する病態:


なし



(ただし凝固活性化状態でAPTTが短縮することがあります)



関連マーカー:


1) PT:外因系凝固活性化機序を反映する検査です。


2) 凝固XII、XI、IX、VIII、X、V、II、I因子、プレカリクレイン、高分子キニノゲン:APTTが延長しているというのは、これらの凝固因子のどれか(複数のこともあり)の活性が低下していることになります。

3)全血凝固時間:20数年以上前までは行われていた検査です。ガラス試験管に血液を入れて、何分で凝固するかを見る古典的検査です。今は全く行われなくなっています。

4)PTT:これも20数年以上前までは行われていた古典的検査です。再現性が悪く、今では行われていません。ただし、PTTの改良型はループスアンチコアグラントの検査に使用される可能性があります。





臨床に役立つお役立ち情報:


(PTよりもAPTTの方が延長しやすい病態)


1) ループスアンチコアグラント

2) ヘパリン投与時



(ヘパリン投与時のモニタリング)

ヘパリンを投与する際に、APTTを~倍(たとえば2倍)に延長するようにヘパリンコントロールを行うべきである、という考え方があります。しかし、管理人はこのような考え方に反対の立場です。日本人では、APTTを2倍以上に延長させるとむしろ出血の副作用が懸念されます。



APTTをあまり延長させないように(出血の副作用をあまり出さないように)、ヘパリンを投与するのが良い投与方法と思っています。



実際、ヘパリンの改良型で、低分子ヘパリン(フラグミンなど)やダナパロイド(オルガラン)といったヘパリン類がありますが、APTTを延長させないために出血の副作用が少ないことをウリにしています。



ヘパリンにかぎませんが、欧米で行われている抗血栓療法をそのまま日本人にあてはめるのは危険と考えています。日本人は欧米人よりも弱めのコントロールを行うさじ加減が重要ではないかと思います。



なお、ヘパリンの効果判定は、FDP、Dダイマー、TATなどで行うべきでしょう。


 


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